私が1年目の時にアルツハイマー型認知症の患者さんの担当をしていた時のお話をします。80代女性の方で入院当初はとても笑顔が素敵な方でした。しかし、看護師さんから食事が最近進んでいない事やなんだかイライラしている事が多いと情報をもらいました。


リハビリ中もいつもの笑顔はなくなんだか険しい顔をして、私から話しかけても無視をしたり、暴言を吐くようになってリハビリの拒否が出るようになりました。
認知症について知識が乏しかった私は参考書で調べてみると「人格が変わる」「暴言・暴力」が症状にあると書いてあるのを見て「病気の症状なのだからしょうがない。我慢するしかない。」と思ってしまいました。


私が休日の時に先輩が代わりに担当をして翌日に「あの患者さん最近、ご飯が食べれてないだけじゃなくて、水分量も減って、お通じが全然出てないようだけど、チェックしているか」と聞かれました。食事が取れていないことは知っていたが、排泄面や水分量までは見ていませんでした。
「だいぶお腹も張っているし、かなりの便秘なんじゃないか」と指摘を受けて、担当の看護師さんに相談したところ、看護師さんもお通じが出ていないことを気になっていたようで、浣腸をする事になりました。

するとどうでしょう。以前と同じにこやかな患者さんに戻り、暴言がなくなりました。私は改めて参考書をしっかり読み返すと、人格障害は重度のアルツハイマー型認知症の症状で暴言・暴力は2次症状(行動心理症状)と言い、環境や体調、周囲の関わり方で現れる症状と書いていました。


今回のケースでは体調不良を伝える事ができず便秘に苦しむ患者様に対して、運動をさせたり、たくさん話しかけたりしてしまい、イライラして暴言が出ました。私は「認知症の症状」と決めつけ、体調をしっかり気にかけ、管理してあげられなかったことを反省しました。

このように一つの例ですが、怒りやすくなる事や暴言が出るときは、身近に原因が潜んでいる場合もあります。介護者は親身に接しているのに暴言を吐かれたらとても傷つきますが、介護者を嫌いになったり嫌がらせをしたくて暴言を吐くわけではありません。自分のことを伝えられないもどかしさが感情的にさせてしまう事があります。

認知症の方が感情的になったらまず、身近に変化がなかったか見直す事で原因が見つかるかもしれません。